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勝手気ままな天使のひとり言
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7世紀、唐の時代、仏教典を天竺まで取りに行った

玄奘三蔵は、往復17年かけ、長安の都へ帰ってきました。

片道1万5千キロの距離を往復17年、行きに15年半、

帰りに1年半かかったそうです。

帰りは1年半で帰ってきたのに、なぜ、行きは

15年半もかかったのか?


それは、各国の王様の滞在要請を、玄奘が

すべて受け入れたからです。

「ここで3ヶ月いてください」

「半年いてください」

と頼まれた玄奘は、

「はい。わかりました」

と言って、その王国の家臣団、武士達に

仏法を説いていたのです。


玄奘の立場からすれば、天竺にありがたいお経を取りに行く、

という大きな目的があって、旅を始めたわけでしょう。


いくら王達に頼まれても

「私には使命があるのだから、あなた方の

 要求には応えられません」

と断ることもできそうですよね?


でも玄奘は断らなかった。

「いま目の前にいる人が、1番大事だ」

ということがわかっていたからです。


「仏法を説いてくれ」と言われて、ここで説かなければ、

“私”が存在する意味がないのではないか。

仏教典を取りに行くというのは、あくまで自分が決めたこと。

旅の途中で、“私”に対して「仏教を説いてくれ」と

求めている人が目の前にいる。

その要望に応えないで、何のために私は仏教典を

取りにいくというのだろうか。


当時は疫病が流行っていましたから、3ヶ月、半年と

滞在している内に、病気で死んでしまうかもしれない。

しかし、それでもいいと思いながら、その依頼に対しては、

本当に心を込めて応えたのだと思います。


玄奘のとった行動を考えたときに、突然ぽこっと、

私の頭の中からある言葉が出てきました。


「玄奘が1人目ではない」


玄奘は、成功した唯一の人であって、それ以前にどうも

何人かの人が天竺に仏教典を取りに行ったらしい。


・・考えてみればそうですね。

天竺にありがたいお経を取りに行こうとした僧侶は、

何十人もいただろうし、実行に移したと思うのです。


しかしその人達は、だれ1人、長安の都には帰ってこなかった・・

どうして、だれ1人として帰ってこれなかったのか?



それは、「先を急いだから」です。


王たちの依頼を断らずに旅先で、仏法を説いていたために、

行きは15年半もかかって天竺に着いた玄奘が、帰りは

たったの1年半で帰ってこれたのはなぜか?


帰りも、この王達は玄奘を放ってはおかなかったからです。

ものすごい協力体制をしいて、国境毎に兵隊を出して、

玄奘を擁護しながら、次の国境まで運んでいったのです。

国境で次の国の軍隊に申し送って、その王達も馬と兵隊を提供して、

次の国境まで擁護して・・・ということをやっていたのです。


この1万5千キロのすべての王達が、そのように玄奘を守って

無事帰国させたのは、行きの15年半があったからです。


玄奘だけがチャレンジャーではなかった。

玄奘が仏教典を持ち帰り、歴史に名前を残しているのは、

《行く道のすべての人を味方にすることができた》

唯一の人だったからです。


玄奘は、仏教に詳しいだけではなかった。

いま、目の前にいる人を大切にする人だった。

玄奘と同じようにチャレンジした僧侶たちは、自分たちの

崇高な理念のもとに、目の前の人を大切にするという思想を

忘れてしまっていたのかもしれません。


その結果として、帰りは自分だけの力で砂漠を

横断しなければならなかったのだと思います。

玄奘は、お釈迦様の教えが本当に非常に深い部分でわかっていた。

すべての人を大切にして生きていくということは、

自分の人生を助けてもらうということでもあるのです。



みなさんも、自分の人生になぞらえて置き換えてみたらどうでしょう。

私たちは、自分の力だけで歩いているのではないですよね。

出会う人、巡り会う人、すべての人の力をいただいて、

人生を歩いていきます。


どのような人生目標を打ち立てても良い。

それに向かって行く途中、全然ちがう方向に引っ張られている

ように見えたとしても、目の前の人やことを大事にしていくという

積み重ねの結果として、必ずある所まで連れていかれます。

流れに逆らわず、起きてくることをひとつひとつ、

誠実に受け止めていくことが、自分にも周りにも、

とても良い選択であったとあとで知るのです。


人に会うたびに、今できることに全力を傾けて、その人を

最も大事な人と思って接していけば、たとえ、今日その人が

死んでしまっても受け入れられるものです。

この瞬間に目の前にいる人に、自分の思いを注ぐということを

やり始めると、過去為したことについて、後悔するという

気持ちはなくなっていくでしょう。


人を大事にするということは、遠くにいて大事にできる

わけではなくて、目の前にいるときにしかできない。

それを最終的にどんな人にでも向けていくことができるか…

最終的な愛は、すべての人、すべてのものが同じ重さになる、

そこまでいくと思います。


(小林正観さんのお話より)


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